新型コロナウイルス感染症対策専門家会議記者会見2020/3/19 状況分析部分 文字起こし

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(書き起こし文章)

 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議記者会見
 https://www.youtube.com/watch?v=Ldc--rAw9sI&t=4351s
 FNNプライムオンライン 
 北海道大学西浦教授説明 36分30秒くらいから

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私からはこのお手元にあります資料の図を見ながら状況分析の結果を説明させていただきます。

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 まず4ページの図1をご覧ください。北海道の流行状況の評価に関してです。
 この図1は4つのパネルがありますけれども、左側の2つというのが流行曲線ですね。一番左上が全感染者を発病時刻ごとにプロットしてみた流行曲線です。大体2月の18日から20日にかけての頃をピークにして、流行曲線が描かれているのを見て取っていただけると思います。そのうち左下の図なんですけども、その全感染者のうちでリンクなしと言って、感染源が不明の患者さんの数がこの左下の流行曲線になります。いずれも北海道庁が発表した公表データをベースにしているもので、実際のところではその公表されていないリンクのある方っていうのがこの中に数人いる可能性があるということもお含みおきください。
 今その流行曲線を取ってみていただけてわかるということはその左下の図なんですけれども時刻と共にリンクなしの感染者数が減っているというものです。リンクのない感染者数というのはどこで感染をしたのかがわからない感染者数を表しています。言い換えるならばその北海道のコミュニティにおいてどれくらい伝播が盛んに起こってきたのかということを反映している感染者数ですが、そのリンクのなかった感染者数が明確に減少傾向にあったように見て受け取れるということがこの図の左下からわかることです。

 右側の2つのパネルをご覧下さい。右側の図の黄色の棒グラフというのは私たちはその発病時刻をもとに逆計算というテクニックを使って推定をした感染推定時刻です。なのでこの右側の2つのパネルの左側の縦軸というのは感染者数を表します。感染というイベントは通常直接に見て取れない、直接に見れないんですけれども、感染の時刻を推定したものがその黄色のバーになります。黄色のバーのときどき途中に灰色の者っていうのが混じっているんですが、1人とか2人とか混じってるんですけどそれらは輸入感染者と言って、海外で感染したことが明確な者。黄色のバーは国内感染例です。その推定感染時刻をもとに実効再生産数と各時刻で1人当たりの感染者が生み出した2次感染者数の平均値を推定したものが青い線になります。その青い線を取り囲むように青い影が95%信頼区間になります。この実効再生産数が1を上回っていると1人当たりが生み出す2次感染者数は1を超えているので流行が拡大傾向にあると。一方で1を下回っていると感染者数は減衰をしていて、おそらく流行が制御状態にあるのだろうということを判断できるんですけれども、右の上の図を見ていただくと2月の上旬の辺りは一応上回っている時期があって、その間その後、1を上回ったり下回ったりすることを繰り返していたんですけども、最近特に3月の上旬になってから1を下回っている傾向があるように見えると。特にその傾向を明確にするために右下の図というのは何をしてるかと言うと、2月29日から2月の2つの期間を比較しているんですけれども、1つの期間は2月16日から2月28日までの、北海道でいわゆる緊急事態宣言を発出する前の期間と、それから緊急事態宣言の翌日の2月の29日から3月の12日までというそれぞれの2つの期間で、仮に実効再生産数が定数だったとした場合に、どの程度の実効再生産数の変化があったのかというのを見たものです。緊急事態宣言の発出前の時の実効再生産数のその期間の平均値が0.9、発出後には0.7になっています。0.7の95%信頼区間の上限値が0.9ということなので、宣言を発出した後に明確に有意に実効再生産数が1を下回って、流行が減少傾向というのが顕著になったというふうに評価することができます。
 なのでこれは北海道民の皆様には行動を自粛して頂いて不便をおかけして大変申し訳なかったと思っていますが、地域の医療現場だったりあるいは地域保健の皆さんが寝ずに皆さん努力していただいたことのたまもので、北海道モデルと言えるものが成功したものと感謝しています。 もちろんまだ札幌を中心として感染者の2次感染の伝播のチェーンが切れてる状態にはありませんから、一切予断を許さない状況であるのですけども、緊急事態宣言を発出後には実効再生産数は明確に減少したということが見て取れました。




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 図2をご覧下さい。ページで言うと5ページです。同様のことを日本全国で見た場合というのが、この図に相当します。
 黄色のバーは再びですけども感染時刻を逆計算によって推定したものです。青の線が実効再生産数。分かりやすいように点線を引いていて、それよりも横軸と平行な点線よりも実効再生産数が上であると感染者数は増加傾向にあり、それより下であると減少傾向にあるということが見て取れるんですけども、これまでは 1の値を挟んで1を超えたり下回ったりというのを繰り返してきたんですけども、3月の上旬から1を下回る傾向が見られます。これもしかすると一定の行動変容の影響があったのではないかと考えられるものです。1を下回っていて2次感染者数が減っている。大規模イベントの自粛であったり接触を皆さんが外出を自粛して接触を減らす行動があったり、地域保健の皆さんが接触者の追跡調査を頑張って、医療現場でも患者数が増える中で皆さん頑張っていただきました。それで1を下回るという状態で減少の兆しが見られるということです。
 しかしながら黄色のバーと一緒にある灰色から黒に見えるような棒グラフを見ていただけるんですけども、これは国外から帰ってきた感染者です。最近になって欧州、米国それから東南アジアで感染が拡大していて、それらの地で感染をしたものが、旅行者であったりあるいは法人である場合があるんですけども日本に帰国をすることでまた新たな流行が生じるという危険が高まっていて、むしろ以前よりも大規模流行が起こってしまう可能性が、このまま丸腰で受けてしまうと大変高い状況にあると考えて憂慮しています。




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 次のページをご覧下さい。ページ6の図3をご説明します。これも公表データを基に各都道府県別で感染源が不明の感染者数に関して、その動向を検討したものです。
 一番上の図が2月27日から3月4日までに報告された感染者、真中が3月5日から3月11日までに報告された感染者、一番下がもっとも最近の一週間です。3月12日から3月18日までに報告された感染者で、いずれもリンクがない、感染源が不明の人だったと、公表データをベースにするとそう報告されていた人で、縦軸っていうのは全ての都道府県でこのデータっていうのの和を取って100%になると。それぞれの週で計算した時に、それぞれの都道府県が何パーセント分その感染者がいたのかというものを表します。ご覧いただければ分かると思うんですけども、当初北海道でリンクの追えない感染者が多かったという状況が続いていて、その後2週前は、その前からでしょうかね、都市部でリンクの追えない感染者が無視できない程度の数がいると。それが増加している場合は大変憂慮すべき状態にあると考えられるものです。




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 7ページご覧ください。図4は国別で報告日別で見た時の新規の死亡者数を検討した結果です。
 皆さんご存知の通りで、イランやあるいはイタリアで大規模な流行が起こっていて、相当数の死者数が確認されていますけれども、日本でも死亡者数が微増しているのが見て取れると思います。ただ顕著で異常な大規模な増加にはまだ至っていないというのがこちらで見て取っていただけるかと思います。




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 8ページご覧ください。図5です。国別の累積感染者数、累積ってのはこれまでの感染者数をトータルで取ったものですけども、その推移を検討したものです。
 皆さん見て取っていただけるんですけどイタリアで大規模な流行が起こってそのあと欧州の各国でそれに引き続くように感染者数の指数関数的な増加が見られています。スペイン、ドイツ、フランスそれぞれ似たような指数関数的な感染者の増殖率で、だいたい2,3日に1回感染者が倍増するペースで流行が拡大しています。一方で日本とシンガポールがその横に伸びている増殖度の遅い状態です。大規模な流行というのがまだ起こっていないというだけと評価をしています。だいたいその倍増する時間は欧州のそれが2,3日に1回なのに対して、日本で大体10日に1回程度で倍増しています。ただこのまま感染者の増加を許すといつか欧州と同様に指数関数的な増殖が認められるリスクがないわけではありません。




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 9ページご覧ください。図6です。これはドイツで大規模な流行が起こっていることを受けて、大規模流行時に1つの都市部などで想定される10万人当たりの新規感染者数と、重篤患者数に関してを計算シミュレーションしたものです。
 左側の図が新規感染者数と1日あたりに新たに感染する感染者数をそれぞれの年齢群別に検討したものです。先ほど尾身先生からドイツなみと説明いただきましたけど、基本再生産数がだいたいドイツで推定したものが2.5程度なんですが、それを元に流行が起こってしまったという場合には流行50日目にピークを迎えるような大変急峻な流行曲線が見られることが危惧されます。成人の感染者が最も多くて高齢者がそれに続くと。だいたい50日でピークになると。右側の図が重篤患者といって呼吸管理あるいは全身管理を必要とするものの数を10万人あたりで計算したものです。横にまっすぐ引いている赤い線が日本で10万あたりで許容されるという集中治療で人工呼吸器のavailableな数を示しています。縦軸の解釈ってのは時点の患者数で、あるその流行時刻で特定の日付に重篤な患者数で、呼吸管理全身管理が必要な人がどれくらいの数がいるのかいうことなんですけど、10万人当たり200人を超える高齢者の重篤患者が出ると想定され、それが大体流行時刻で言うと62日目ぐらいにピークを迎えます。それは ICU の入所可能な人工呼吸器の使用可能なキャパシティというのを超えてしまうということが想定されます。もちろんこれはその仮想的な争点によるシミュレーションなんですけれども、今ヨーロッパで起こっているということは目を覆いたくなるようなシビアな状態であるということをまず私たち理解しないといけないのでこういった数値計算を出させていただきました。こういった状況が生じないようにこれから公衆衛生学的な対策を講じることでオーバーシュートを避けるということが大事であるということが皆さんこれでご理解いただけるかと思います。

図の説明は以上です。


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・引用(図表)
 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 3 月 19 日)
 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610566.pdf
 厚生労働省

・引用(文章)
 https://www.youtube.com/watch?v=Ldc--rAw9sI&t=3747s
 FNNプライムオンライン 

・文章は、ほぼ放送そのままです。いわゆる「えー・でー」などの言葉のみ取り除いています。
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